地震のあとさき
もう22年という月日が経ったことが信じられないけれど、確かに私達家族は阪神淡路大震災を現在も住む尼崎市内で経験しました。もし子供の頃の経験だったなら、これほど強烈に刻まれることはなったかもしれません。でもあの日の経験で、地震が起きてしまうと逃げることなど全く不可能であることを実感しました。
6年前の東日本大震災、昨年の熊本地震、そして近い将来必ず起こるといわれている南海トラフ地震。
リノベーションを考える時、耐震工事は命に係わる最重要事項です。しかしながら阪神間の中古住宅にお住まいでも、ご自宅の耐震工事について関心を寄せておられない方が多いように見受けられます。もちろん費用の掛かることであり、できれば後回しにしたいお気持ちもわかりますが、自治体からの補助金対応もあることですし、リノベーションの際に合わせて施工されるのがコスト面から考えても必然かと思います。
残念ながらmasuoka-designでは耐震工事に対応しておりません。そのため現在中古住宅のリノベーションはお請けせず、マンションのリノベーションを中心にご依頼を請けたまわっています。
中古住宅のリノベーションを検討されている方には命に係わる大切なことですから、耐震工事について経験豊富な施工業者に依頼されることを、是非お勧めしたいと思います。
そして地震のことを考える時、いつも我が家のテーブルにまつわる出来事が思い出されるのです。アンティークパインのダイニングテーブル。
当時マンションの1階に住み床に布団を敷いて寝ていました。その床が地震で30cmも上下する様を目の当りにし、頻繁に続く大きな余震に怯える日々が続いたのです。毎日の緊迫したニュースの中で、倒壊した建物から救出される人々は多くの場合、大きな家具などの隙間に命を守られたとのこと。早速リビングにあるダイニングテーブルのすぐ横に布団を敷いて寝る日々が始まりました。状況を理解できない幼い娘はテーブルの下で眠ることに怯えることなく、無邪気にはしゃいでいることが救いではありましたが、親の方は頻繁に起こる余震の度にテーブルの下に逃げ込みながら、眠れない夜もあったのでした。それでも大きな太い4本の脚に囲まれたテーブルが何とも頼もしく、大丈夫だよと守ってくれているような気がしたものです。
あれから22年、2回の引っ越しを経て今も我が家の中心にあります。ショールームとして訪れていただいた方々とお話させていただくのもこのテーブルです。
出会ったのはたぶん地震の前年だったでしょうか。
まだその頃、豊中市のロマンチック街道沿いにあったアンティークショップ「DOUBLEDAY」の店先に置かれていて、＜売約済み＞の札が掛かっていました。天板のサイズは136×95cm、3人家族の私達の生活には十分なサイズで、丸く彫り込まれた脚は直径約12CMあり、その姿の堂々として美しいこと。一目ぼれですね。
お店の方にお話を聞いてみると、購入予定の方以外に＜キャンセル待ち＞の方が二人控えているとのことで立ち去りかけたのですが、どうしてもあきらめきれず、キャンセル待ちの名簿に3番目として名を連ねました。
それからしばらく時間が経ち忘れかけていた頃、「予約キャンセルが続いたのでいかがでしょうか？」という連絡があり、思いがけず我が家にやって来てくれることになったのです。アンティークとの出会いは本当に「縁」だなあとしみじみ実感する所以です。
娘が小学生になって遊びに来た子供たちが、「わぁー木の机やー！」とびっくり。家でも学校でも「無垢の木の机」を見たことがない時代になっていたのですね。テーブルはスチールだったり、合板だったり…無邪気に驚いている姿が今も鮮やかに思い出されます。
震災の直後には、「DOUBLEDAY」のお店の方から夜遅くお電話をいただいたことも。
まだ幼かった娘を連れて訪れても、たまにしか買物しない客だった私達なのに安否を気遣い、かけていただいた「大丈夫でしたか？」の暖かい声は、今も心を温めてくれる大切な思い出です。
今はもう社会人になった娘ですが、家族で子供の喜ぶような動物園などに行くこともなく、親の興味のおもむくままあちこち連れまわされたせいでしょう、アンティークには全く関心がないようです。でもこのダイニングテーブルや自宅は気に入ってくれているようなので、将来大切に引き継いでいってくれることがささやかな願いになっています。
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